株式会社クリアコード 代表取締役社長 須藤 功平 氏 〜情報通信ベンチャー交流ネットワーク会員企業〜
|
<氏名> 須藤 功平 氏 |
近年、オープンソースソフトウェア※(以下、OSS)の活用が企業や自治体などでも浸透しつつある。背景にはOSS自身の完成度向上や種類増に加え、導入サイドが情報システムに係るコスト削減や利便性向上の手段としてOSSに注目していることがある。OSSは事務処理や文書作成用のオフィスアプリケーション、また、ECサイトやソーシャルコミュニケーションサイトなどのWebサービスでのシステム構築に用いられている。さらには、近年注目を浴びるクラウド分野においてもOSSの活用に注目が集まっている。 |
1.株式会社クリアコードとは〜先端OSSでの開発を武器にシステム開発を行う技術集団〜
オープンソースソフトウェア(以下、OSSと記載)を活用したビジネスといっても、OSS自体の開発、OSSを活用した情報システム構築、OSSのサポートサービスなど、ビジネス形態は様々である。また、最近では対象となるソフトウェアも非常に多い。まずは、株式会社クリアコードではどのようなOSSを扱っているのかを尋ねた。
「OSSと一口で言っても様々なものがあります。世に出された多くのOSSに関わる中で、当社として継続的にかかわり続けるようになったものもいくつかあります。」(南氏)
様々なOSSに関わる中で、現在では同社の強みとなっているOSSは4つあるという。まず1つ目は、Mozilla(Mozilla FirefoxとMozilla Thunderbird)。2つ目は全文検索ライブラリSennaの後継として開発されているgroonga。3つ目はRuby。最後に迷惑メールフィルタであるmilter managerである。
なかでも、milter managerは、迷惑メール対策の適用条件を柔軟に設定し、さらにmilter※※ の管理コストを低減することを目的として開発されたフリーソフトウェアであり、(独)情報処理推進機構からの受託ソフトウェア開発をきっかけに、同社が独自に開発したソフトウェアでもあるという。
「milter managerの開発は、自分が担当しました。その上で、どのように展開してビジネスにつなげていくかは苦労しました。開発直後のソフトウェアで導入実績がないこともあり、直ぐに大きな企業に導入してもらうのは難しい状況でした。そこでまずは、様々な地域の技術者コミュニティの中でソフトウェアを紹介して回りました。」(須藤氏)
左:営業担当 南氏(創業時の代表取締役) 右:代表取締役 須藤氏
milter managerの開発後、須藤氏は地域での技術者コミュニティにおいて講師等を務め、その紹介をするなど地道な活動を続けたという。その中で、コミュニティに参加している人たちからソフトウェアの紹介をもっとして欲しいとの声がかかるなど、milter managerの認知度も高まっていった。現在では導入したいという人達から問い合わせが来るようになり、導入実績が少しずつ積上がっている。
「本当に最近になって、milter managerを見つけて『自社のサーバに入れたいので協力してもらえないか』という顧客からの依頼も来るようになりました。」(須藤氏)
さらに、メーリングリストを作成し、milter managerに関する様々な意見等を共有できる仕組みを作ることで、質問や要望・意見などがどんどん共有されるようになったという。
「milter managerの展開策として、コミュニティ活動による方法以外、やりたくなかったというのが本音です。というのは、ソフトウェア開発の思想や考え方に共感してもらい、使ってみようと思ってもらえる人を増やし、様々なコメントをもらいながら、ソフトウェアを改良していく中で、本当に良いソフトウェアが出来てくると思うからです。ただ、今回の場合、実際にどうなるか心配でした。果たして、コミュニティの中から、利用する人が出てきてくれるか、反応があるか見当がつきませんでしたから。」(須藤氏)
このようなmilter managerの開発から認知度向上、さらにはソフトウェア自体の機能向上や導入実績積上げに至るコミュニティ活動を通じた取り組みは、まさにOSSを扱う同社の特長や考え方を反映した方法なのであろう。特に、同社のメンバーにおいて、これまでOSSに関わるコミュニティ活動の知見や経験があってこその取り組み方法なのではないか。
2.設立の経緯〜優秀なOSSエンジニアとともに起業〜
株式会社クリアコードは、OSSを専門に扱う企業である。同社は、同じベンチャー企業に勤めていた5名のメンバーにより設立されたという。
「設立時のメンバーは5名で、皆同じベンチャー企業に勤めていました。その会社もOSSを前面に出したビジネスをしていた会社でした。当時、その会社で私は営業担当でしたが、特に優秀だと思った4名のエンジニアを誘いました。」(南氏)
株式会社クリアコードのメンバー
同社の設立前に所属していたベンチャー企業は大阪にあったという。当時大阪の経済状況が良好とはいえなかったこともあり、創業時の代表取締役であった南氏は、当時を振り返り「まずは、社員の雇用の場を維持したいという思いが強かった」と。その一方で、共に新しい会社のメンバーとなったエンジニアは、高い技術力を有していたため、仕事をある程度取ってくる自信もあったという。このような背景もあり、南氏は株式会社クリアコードを東京で設立している。
「OSSを使うということは、他人が作ったソフトウェアをシステムに組み込むということです。ですので、不具合があった時には、自力で何が問題かを突き止め、解決する力が必要となります。当社では、たとえ、これまで扱ったことのないOSSであっても、問題解決できる人材がそろっていました。この点が仕事を取ってくる自信になっていました。」(南氏)
南氏の言葉にもあるとおり、株式会社クリアコードはすべてのエンジニアがOSSの技術開発、コミュニティ活動に積極的に関わる会社であり、すべてのエンジニアが高い問題発見・解決力を有している。それが故に、自社の強みである4つのOSSを中心に様々な技術開発に取り組めているのであろう。
3.経営者像〜「技術開発と企業経営」それぞれの強みを活かした社内パートナー〜
今回、株式会社クリアコードへの取材を行う中で、同社の経営スタンスが特徴的である様子が伺えた。創業時の代表取締役であり現在は営業担当である南氏は、営業も含め企業のマネジメント部分に強みを持つ方である。一方、現在の代表取締役である須藤氏は、学生時代からOSS開発に取り組んできた経緯もあり、優れた技術力を有するエンジニアでもある。
「私は、元々は銀行で法人向けの営業等をしていたこともあり、その後勤めたベンチャー企業でも営業担当となりました。OSSを活用してビジネスをするお客様や官公庁が多い東京が主たる営業先でした。その当時から、将来、ビジネスをするならば東京と感じていました。」(南氏)
「当社のエンジニアは、私も含めて元々個人ベースでもOSSのコミュニティでの開発活動をしてきました。その意味からも、自分たちが一番自信を持って取り組めるものはOSSの開発です。様々な選択肢の中から検討を重ねて、OSSを選択したというわけではなく、今までの自分たちの活動であるOSSによる開発が、そのままビジネスにつながっています。」(須藤氏)
ベンチャー企業においては、技術力はあるものの、経営的な部分で長けた人材がおらず伸び悩む企業もある。同社はその部分を社内で役割分担を行うことで、上手に機能させているようである。同社の扱うOSSについて、強みとなる技術力を生み出す須藤氏、同社の経営的なバランスを取りつつ代表取締役である須藤氏をサポートする南氏、それぞれの能力を活かした絶妙なパートナーなのであろう。
4.交流ネットワーク会員への登録のきっかけ
株式会社クリアコードは、(独)情報通信研究機構の情報通信ベンチャー交流ネットワーク会員企業である。そこで、交流ネットワーク会員になった理由を尋ねてみた。
「様々な他のベンチャー企業との出会いのきっかけということもありますが、それ以上に、公的機関である情報通信研究機構との関わりを持てればと考えたこともあり、交流ネットワーク会員に登録しました。」(南氏)
同社は、公的機関の事業を活用してmilter managerの開発を成功させたという経験もあり、自社ビジネスにとって、公的機関との関係構築を重視しているようである。その関係構築のひとつの手段として交流ネットワーク会員に登録したという。
また、その登録がきっかけとなり、情報通信研究機構主催のNICT起業家経営塾、交流ネットワークサロン等にも参加している。同社の未来を描く必要性を感じていた南氏は、NICT起業家経営塾においてビジネスプランをブラッシュアップできたことは、有益な経験となったと参加体験を語ってくれた。また、須藤氏は交流ネットワークサロンに参加することで、興味ある技術分野について、さらなる知見の拡充につながったと振返って語ってくれた。
このような活動の背景には、公的機関を含む様々な人たちとの関係構築について、同社の重視する考え方がある。
「他のベンチャー企業等との交流を通じて、新ビジネスを創っていこうとする姿勢は大切だと考えています。ただ、企業間での商談や取引にまで発展させるには、同じメンバーで定期的に会うような機会を作り出すことが必要です。そうでないと、なかなか相手のことは分からないですから。」(南氏)
ビジネスを前提とした交流の重要性を認識した上で、さらに、「定期的に交流し、互いに相手のことがよく分かること」が必要であると、同社が重視する交流のポイントを語ってくれた。
5.株式会社クリアコードの今後の方向性〜ビジネスチャンスを広げるための他社とのつながり〜
最後に、OSSの技術開発ベンチャー企業である株式会社クリアコードとして、今後の方向性を尋ねた。
「当社の今後として、様々な方とのつながりを大切にしたいと思っています。特に、取引先との関係を強化したいと考えています。ですので、これまでの主要な取引先3社と事業提携し、複数の会社が一緒になって、広がりのある面白いビジネスをしていくつもりです。」(南氏)
実際に同社では、株式会社クリアコードを含む4社(すべてOSSに関わる企業)で定期的な会合を実施し、4社のそれぞれの強みを活かした協業体制の強化を図る計画を発表している。その計画には、「単独の企業としては、実現できるビジネスも限られてしまうが、互いに強みを補完できる様々な会社(しかも複数社)が一緒になれば、色々なビジネス展開の可能性が広がる」という思いが込められている。
特に、普段から定期的に会い情報交換する機会を設けることが大切であり、新しいビジネスの芽が出てきた際には集中的に議論するというスタンスは、OSSを扱う企業ならではの特徴かもしれない。
また、南氏は次のような同社のビジネススタンスについての思いを語ってくれた。
「ベンチャー企業を経営していくには、特色のあることに取り組みつつ、取引先を含め、自社のファンになってくれる方々を増やしていくことが大切だと思っています。そのためには、全力で良いものを作り提供することが必要です。それができれば、成果(仕事)は自ずと当社に返ってくると思っています。」(南氏)
6.おわりに
今回、情報通信ベンチャー交流ネットワーク会員企業である株式会社クリアコードに取材を行った。その中で、OSSを武器としてビジネス展開している姿、またコミュニティ活動を通じた技術開発やビジネス展開の様子など、OSSに関わるベンチャー企業の特徴について話を伺うことができた。
株式会社クリアコードを含め、交流ネットワーク会員企業には様々な特徴を有するベンチャー企業が集まっている。情報通信研究機構として、これらベンチャー企業の取り組みを支援するとともに、今後の活躍に期待したい。
★★情報通信ベンチャー交流ネットワークにご興味のある方は下記URLをご覧ください★★
【交流ネットワークへはこちらから】 http://www.venture.nict.go.jp/kouryu/
(会員登録は無料です)