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株式会社アクロスソリューションズ 代表取締役 野村 充史 氏 〜平成23年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会 発表企業〜

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<氏名> 野村 充史 氏

<社名> 株式会社アクロスソリューションズ

<役職> 代表取締役

<設立> 2006年5月

<資本金> 1,000万円

<URL>http://www.acrossjapan.co.jp/

「おねだり QR」は、ほしいものをおねだりして買ってもらう店舗向けのウェブサービスで、実店舗とモバイルを組み合わせた全く新しいクラウド型のウェブサービスです。
株式会社アクロスソリューションズでは、ほしいけど商品が高額で自分では手がでない、お小遣いが足りなくて買えない、といった若い女性をターゲットにし、彼氏、友人、知人に「ほしい」といったおねだりをする 「おねだり QR」 を提供しています。

1.初めに

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第14回(平成23年度)NICT情報通信ベンチャービジネスプラン発表会で発表された「おねだりQR」を展開している株式会社アクロスソリューションズ 代表取締役 野村充史(ノムラ アツシ)さんにお話しをお聞きしました。
株式会社アクロスソリューションズは、石川発ICTベンチャーで、小口電子商取引など主に流通業界に特化したICTソリューションを独自に展開し、地域経済の活性化に貢献しています。
モバイルを使った国内初の卸売業・小売業向けの受発注システムを開発し、ICTで流通の仕組みを変革、新しい価値を世界へ生み出しています。

2.【地域発、グローバル企業へ】

(野村社長)弊社は今から約5年あまり前の平成18年5月23日、私が34歳の頃、設立しました。現在は北陸3県(石川・富山・福井)が、主な取引先です。ところで、現在のビジネスの市場規模ですが、東京を100とすると、石川県は0.7~0.8%で、1%未満です。大阪の市場規模も、東京の半分以下です。ビジネスを広げる為には、まずは東京で市場を広げたいと考え、また、石川県産業創出支援機構(ISICO)様からのお声がけがあって、今回のNICT情報通信ベンチャービジネスプラン発表会に挑戦しました。今年度は、今まで以上に人材の投資・拠点の投資をして市場を広げてお客様に貢献したいと考えています。

(聞き手)起業に至るまでのプロセスについて教えていただけますか?

(野村社長)最初は地元のOA機器商社、イワイ(株)に入社し、ICT関係の経験を積みました。その後、地元のシステムベンダー、石川コンピュータ・センターに入社し、在籍中のほとんどをNECに出向していましたが、すべてを自分でやってみたい。という強い想いと、40になってから「やっておけば良かった」と後悔したくなかったので、起業しました。

(聞き手)おひとりで独立なさったのですか?

(野村社長)はい、資金集めも銀行回りから始めましたが、最初は断られることもありました。事業のアイデアや会社の方向性も、起業後、毎年のように変化していましたが、ようやく、明確になってきたと言う状態です(笑)。WEB関連の制作から始めましたが、現在、自社の強みは、流通業に特化したICTソリューションを提供、具体的にはEC事業と受発注事業の2つの柱を幹としてお客様のお困り事をしくみとソリューションで解決しています。

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アクロスソリューションズロゴ

3.【プロジェクトマネジメント力】

(聞き手)起業して実現したかった事とは?

(野村社長)仕事のスピードを変えたかったし、正直に言うとお金持ちになりたかったです(笑)。前職時代、NECに出向して1年未満で、提案型の営業で、誰もが予期しなかった大規模なGIS(地図)のシステムを石川県羽咋市役所からチームで受注できた事など、成功体験を積む事が出来ました。他には石川県かほく市の防災無線が入るきっかけ等、実証実験のスキームを作らせて頂きました。

起業後も、営業を担当し、社員には開発を担当してもらっていますが、最初はなかなかお客様が付かず大変苦労しました。以前はNECの名刺でお客様先に訪問していたので、名刺を出すだけで応接室に通されお茶が出てきました。しかし起業後は、会社名が無名の為、全く取り合ってもらえない状態でした。そこで拙速に市場をひろげる戦略を取らず、1社1社のお客様を大切にして、実績を積み上げてきました。この5年の経験から、現在はお金持ちになりたいと言った邪念は自然となくなっていました。

(聞き手)当時から、官公庁向けの営業活動で、シンクタンクや大手ベンダーなどをまとめてプロジェクトを推進されてこられたとの事ですが、プロジェクトマネジメント力が、現在のお仕事でも生かされているのですね。ISICOの越田さんとの出会いはどのようなものでしたか?

(野村社長)ホームページのどこを誰が何回見たかがわかる、システムを開発して特許を持っているのですが、それを越田さんに紹介した事がきっかけです。例えばメルマガを誰が何人くらい見ているのか、知りたいと言うお客様のニーズからこのシステムを開発したのですが、個人情報の取り扱いの難しさやセキュリティ面もあり、このシステムをどこが安全に使いこなせるのかを考えて、現在は簡単には営業出来ないものと考えていますが、良いところがあれば紹介してください。(笑)

4.【常にお客様の期待を超える価値を提供】

(野村社長)すべてはお客様のニーズから企画・開発を行いますが、お客様の期待を常に上回り、良い意味で期待を裏切る、+120%の成果物を提供したいと考えています。全国のITベンターはSIと言われる下請け企業が80%を超えていますが、弊社は、あえてやっていません。下請けで仕事をこなすのではなく、規模は小さくても、お客様をパートナーと考え企画提案し、地道に仕事を広げています。元請けがいない事はとても嬉しい事です。

(聞き手)いわゆる元請けは御社自身ですね。取引企業の数は現在どのくらいでしょうか?

(野村社長)約200社です。多くの方から、「積み上げ式でいいね」と言われますが、これまでの仕事のほとんどは、HP制作など依頼を受けて作成し納めると言う仕事の仕方をしていました。サーバ代は頂いても、管理費や保守料は一切頂いておりませんので、実は商売は下手なのだと思います(笑)。今回、MOS(モバイルオーダリングシステム=中小規模企業向けモバイル受発注システム)を開発して、1日もシステムが止まらないように保守する必要があるので、はじめてお客様に役立つ為の維持管理としての保守費用が発生する仕事が出来ました。

(聞き手)MOS、モバイルオーダリングシステムについて教えて頂けますか?

(野村社長)MOSは流通業に特化した完全クラウド型の受発注システムです。MOSはパッケージ商品で、約半年でシステム開発しました。元々はお客様である日本海酒販様からのリクエストで、スクラッチ(フルオーダー)で作成。大手スーパー・量販店と日本海酒販に入っている受発注システムEOS*やEDI*は、小口の飲食店などでは、入っておらず、小口受注のほとんどはFAXや電話で受けていましたが、それらお客様数が80%を占めており、情報を基幹システムに入力するために、大変な人手と稼働がかかり、その売上の比率は、逆に小口受注が全体の20%、大手スーパー等が80%を占めている状態です。

小口取引のお客様の数は多くても、売上が少ないので、経費の効率化をしたいと言うニーズを実現する為にMOSを開発しました。従来からのEOS、EDIなどの大型システムは、飲食店などへの導入が難しかったので、今回、携帯・スマホ・タブレットPCを使った簡単に注文できる受発注システムを作りました。MOSを使うと、自動的に注文内容が基幹システムに入力できます。特徴は何と言っても電話とFAXからの解放です。注文を受ける側は、データ入力がなく、今まで半日以上時間をかけていた入力作業がほとんど無くなりました。このアプリケーションは、日本海酒販と取引先数十社を対象に約1年に渡って実験運用を繰り返しながら、システム設計の改善を重ねてきました。

また受注側だけでなく、発注者側のメリットも検討の為、頻繁にヒアリングを重ねる中で、顧客からの在庫確認の電話がこれまで多かった事に着目。そこで注文する側も、在庫の量をMOSで確認しながらオーダー出来るようにしました。また発注者である、飲食店・小売店などの顧客は、専用の端末を使わず、通常使っているスマホなどで直接注文を入力できるので、システムを安価に構築することができます。

5.【小口流通業のしくみを変えるブルーオーシャン戦略】

(聞き手)お客様数の多い、小口電子商取引のシステム開発で市場を開拓された事はブルーオーシャン戦略そのものですね。ビジネスモデルを教えて頂けますか?

(野村社長)大手の酒販卸会社にMOSシステム一式を売り切るパッケージ価格としては数百万円で、この場合、日本海酒販に発注する飲食店は、すべて無料でMOSを利用することが出来ます。また、月額使用の場合は、数万円で提供するので、中小の酒卸業者でも導入が可能です。スマホの注文画面は、「ビール」「日本酒」「ソフトドリンク」など、カテゴリー別に構成して、お店ごとに注文頻度が高い銘柄が自動的に上位に表示されます。商品検索や注文履歴の確認の機能があるので、オーダーしたお店は、後からでもオーダーを変更したり、確認をすることが出来ます。スマホやタブレットPCを活用したオリジナルの企業間受発注システムを小口受発注業務のニーズがある流通業に提供し、費用対効果の向上及び経常利益のアップをサポートしたいと考えています。

(聞き手)お客様のきめ細かなニーズを具現化されたのですね。大手がなかなか手を出さない分野での電子商取引の実現は、市場が広がると大変大きなインパクトになりますね。2012年3月には、ITベンダーである(株)システムサポートのグループ会社となり、信頼できるシステム提供が出来る盤石の体制を加速していますが、今後の展開について教えてください。

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6.【No1へのこだわり】

(野村社長)ビジネスにおいては、「No1」でなければならないと考えています。ISICO発行の弊社の記事の掲載された冊子をご覧になられた銀行の方が、システムサポートの役員を紹介して下さり、資本増強と信頼性をより強固にしたいと考えて、今回システムサポートのグループ会社となりました。ニッチでも、ブルーオーシャンを開拓したいと思っています。MOSは数万人の利用者が同時に使っても大丈夫なように、設計していますが、想定外の事はありうると考えて、人為体制は今後も整えて行きたいと考えています。MOSと英語名にしたのは海外での展開も視野に入れてのことです。現在、この分野はICTによるシステム化が進む中で、唯一アナログが残っている分野だと思っています。酒販店をはじめ、理美容、医薬卸業界などにも、今後は導入を広げて流通分野の小口電子商取引システムでNo1になりたいと思います。

7.【支援者紹介】

ベンチャー企業を支援している財団法人 石川県産業創出支援機構 産業振興部 ITアドバイザー 越田 幸一氏にベンチャー支援の胸の内をお聞きしました。

124x160px 越田 幸一氏 IMG_0527

(聞き手)石川県のベンチャーの状況・動向についてお聞かせ下さい。どのような支援をしていますか。

(越田氏)石川県のIT産業において、大手IT企業からの下請け業務が海外流出し、従来型の下請ビジネスが先細りする厳しい状況にあります。県内企業においては、自ら自社の技術を提案できる企業への転換を図りながら、付加価値の高いオリジナル商品やサービスを開発することが喫緊の課題となっています。現在、ベンチャー支援として下記のような取組みを行っています。
・ITビジネス塾
県内IT企業の商品開発力・企画力をより一層強化することを目的に、平成20年度から大手IT企業と県内IT企業とのマッチング事業に取り組んでいます。平成24年度は、今後成長が見込まれる分野で、大手・ニッチトップIT企業との連携を図り、首都圏での展示会・商談会など県内IT企業のマッチング機会の拡大を図る事業を実施。
・ITビジネスマッチング
県内地場産業と、県内IT企業との交流機会があまり無いため、県内企業同士の取引が非常に少ないと言う課題があります。コスト面・コミュニケーションなどで双方に利点があることから「地場産業とIT企業のビジネスマッチング」を実施。

(聞き手)ベンチャーを支援する上で特に苦労を感じたところはありますか。またベンチャーの成功の要因は何だと思いますか?

(越田氏)中小企業は営業力が弱いため、どうすれば効率的に販売促進できるか。すばらしい自社技術でも事業として成立できなければ、世の中に認知される商品やサービスにはなれないと思います。
事業として成功する要因は、技術革新を取り入れて絶えず進化し続けること、あきらめずチャレンジし続けることではないでしょうか。

(聞き手)ベンチャーにとって必要な支援施策についてどのようにお考えですか?また、その支援策を導入するためには、何が必要だと思われますか?

(越田氏)公的機関が出来るのは「マッチングの場」を増やして、中小企業同士が連携して「新事業」を生み出すことです。弊機構が実施しているITビジネス塾も、元気あるニッチトップ企業を講師にお招きして「新たな出会いの場」を作ることを目的にしています。

(聞き手)越田様の略歴をご紹介頂けますか?今のお仕事についてのお考えと、ベンチャー支援に当たっての想いを聞かせて下さい。応援メッセージを一言お願いします。

(越田氏)NTT西日本の法人営業として、石川や大阪などで業務ソフト・基幹システム・PBX(交換機)・デジタル回線などを販売しておりました。その後NTT西日本を退職、平成20年よりNTT西日本-北陸(子会社)から石川県産業創出支援機構へ出向し、ITアドバイザーとして働いております。

石川県の基幹産業は「鉄工機電・食品・繊維」であり、リーマンショック以後に基幹産業が徐々に回復の基調にあります。しかし、石川県の活力と雇用を短期間に飛躍的に変えられるのは、IT企業しかないと確信しています。
アクロスソリューションズは、まだ小さな会社ですが、今まで以上に「技術革新を取り入れた進化とチャレンジ」をしつづければ、日本を代表する企業になれるかも知れません。今後の活躍を期待しております。

8.【取材後記】

「お客様のために」との一心で、ビジネスを展開する野村社長だからこそ、開発できたアプリケーションやシステムが、流通業界を大きく変える日も遠くはないのかもしれません。愚直に、お客様の声に耳を傾け、「アナログな取引を完全に電子化することで、お客様の経常利益を上げることが目的」と話す野村社長の言葉からは、自社のシステムを納品する事だけが目的ではなく、お客様の目的達成を通して、未来の小売業界や飲食業界の発展に大きく貢献するのではないかと期待せずにはいられません。ベンチャー企業発、B to Bでの、業務系のシステム提供を行うアクロスソリューションズ、「Across」お客様の課題や問題、固定観念を「超えて」ソリューションを提供していきたいと、目を輝かせて語る野村社長の姿が、とても印象的でした。

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左より越田氏、野村氏、岸氏

*EOS・・・Electronic Ordering System  企業間のオンライン受発注システム
*EDI・・・Electronic Data Interchange  商取引に関する情報を標準的な書式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み

◆平成23年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会のリンク先
http://www.venture.nict.go.jp/event/node_3774/node_37590/node_37108/node_37431/node_37511

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