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メルカリ アメリカ法人CEO 石塚亮氏

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(サンフランシスコの中心街にあるアメリカのメルカリオフィスでの石塚氏)

石塚さんは中学時代にアメリカに転居し、その後アメリカの大学を卒業後、日本に帰国しウェブサービス制作会社に勤務。その後再び渡米し、大学時代のルームメイトたちとRockYou Inc.をシリコンバレーで創業します。RockYou Inc.は、それまでに無かったソーシャルアプリケーション・ソーシャルゲーム市場を創り出したと言われるスタートアップです。RockYou Inc.ではチーフ・アーキテクトや、アジア展開責任者としてロックユーアジア株式会社COOを歴任。その後、メルカリには創業から携わっています。

Q: まずは RockYou Inc. 時代の話を伺わせてください。 どのようなきっかけで創業時から事業立ち上げに関わられたのでしょうか。

A: 大学時代のルームメイトと、彼が勤めていた会社の元上司とが起業しようと考えていたところに、一緒にやらないかと誘われました。ルームメイトの影響で、大学時代からプログラミングをやってきたこと、起業に興味を持っていたこと、そして特に大学時代をともに過ごす中で築いた信頼関係があったので声がかかったのだと思います。

最初は、3人全員でコードを書いてプロダクトをつくっていましたが、そのうち、ルームメイトの元上司がCEOとして経営を、ルームメイトがCTOとしてチーム作りを、私がチーフ・アーキテクトとしてプロダクト作りを、という役割になっていきました。

創業当初は自己資金でまかなっていて、オフィスも(治安があまりよく、賃料が他と比べて安価なことで知られる)イーストパロアルトのルームメイトの家に集まって、コードを書く日々。創業後数か月して少額のエンジェルラウンドを行い、その後シリーズAでセコイアから資金調達をしました。それに伴い、拠点もサンマテオ、レッドウッドシティと移ります。RockYou Inc.は現在サンフランシスコにオフィスがありますが、我々3名は退職しています。

Q: RockYou Inc. 時代に経験した最も大きな変化は何ですか。

 
 A: 起業当時(2005年)はMySpaceがソーシャルメディアとしては隆盛しており、フェイスブックはまだこれから、といった時代です。RockYou Inc.は、マイスペースのプロフィールページを、フラッシュのスライドショーでかっこよくするサービスとして始まり、ソーシャルメディア上のアプリケーション・ウィジェットを提供していました。

その後、フェイスブックが普及し、オープン・プラットフォームとしたことを受けて、我々もサービスを拡大、2007年にはフェイスブック上最大のアプリデベロッパーになりました。ソーシャルメディアのVirality(注:爆発的に拡散することを)使ってユーザーを大量に集めた初期のケースといえるでしょう。

その後、RockYou Inc. は2つの変化を経験します。

ひとつはソーシャルゲームへの参入です。時代の変化もあって、ソーシャルゲームに参入したことは、サービス上の大きな転換点と言えます。

もうひとつは、ビジネスモデル上の大きな転換点であった、広告事業への参入。RockYou Inc. は、アプリデベロッパーでありながら、メディア広告事業を手がける会社となったのです。フェイスブック上にRockYou Inc. のアドネットワークを構築し、ほかのアプリデベロッパーのアプリ広告を出してもらう、というビジネスモデルを確立できたことが、ビジネスモデル上の大きな転換点だったと思います。

 Q: RockYou Inc. はアメリカで起業、メルカリは日本で起業されたわけですが、日本とアメリカでの 起業環境の決定的な違いは感じますか。

A: 決定的な違いがあるとは私は思いません。

ベンチャーキャピタルなどの資金量では圧倒的にアメリカの方が大きいので、そこに目が行きがちですが、アメリカはその分スタートアップの数も多いのです。資金調達の環境という点では日本も以前に比べてかなりよくなっていると思います。また起業家育成機関としてアメリカのアクセラレータが充実していると言われますが、日本にも良いアクセラレータができてきています。起業家のネットワークという観点では、実は日本の方が、つながりが濃いようにも思います。

違いがあるとすれば、次の2点かもしれません。ひとつは、「起業するんだ」と言ったときの、周りの反応です。アメリカでは起業する人に対しては「すごいね、がんばって!」「応援するよ」という声が圧倒的に多く、実際に友達などが積極的に資金提供をしてくれようとします。日本ではその傾向はまだ少ないように思います。

ふたつめは、スタートアップを支える弁護士や会計士などのプロフェッショナルサービスの質と量です。アメリカ、とくにシリコンバレー界隈では、スタートアップに積極的に関わりたいと考え、実際に支援実績が豊富な弁護士や会計士が多いです。日本ではまだアメリカほどその点が充実しているとはいえないのではないでしょうか。

 Q: 日本で大躍進しているメルカリですが、引き続きアメリカでもサービスを成功させていくにあたって、どのようなご苦労がありますか。この場合は「ローカライズ」ならぬ「グローバライズ」を行っているように思いますが、いかがですか。

A: メルカリは、アメリカも日本も同じUI(ユーザーインターフェース)です。ただ、アメリカ展開する際には「アメリカ人ユーザーにいかに受け入れられるか」が大切ですから、日本のプロダクトをそのまま持ち込んでもマーケットフィットするとは限りません。細かい機能や、トラブルへの対処法といったポリシーなどは市場に合う形に調整しています。

たとえば、アメリカと日本では返品に対する文化がまるで異なります。日本では買ったものを返品する文化はあまりありませんが、アメリカの買い手は、返品が当たり前です。アメリカの小売店もその対処が進んでいますが、個人間売買で買い手がどんどん返品するとなると売り手の負担が大きくなるので、そのあたりのガイドラインをしっかりと設けています。

Q: アメリカで特に売れているカテゴリは何ですか。

A: アメリカで圧倒的にこれが売れている、というカテゴリは今のところ、際立ったものはありません。かなり広い範囲のものが売れています。特に衣服には興味のある人が多く、配送もしやすいので個人間売買の品物としては相性が良いです。またガジェット類、ベビー・子供服もよく売れています。

メルカリでは、カテゴリやサイズなどから簡単に検索できますし、ユーザーの好みに合わせてタイムライン表示もパーソナライズされているので、商品が選びやすいとアメリカでも好評いただいています。

 Q: 現在、メルカリの人員はどのようになっていますか。

A: 日本は現在200-300名体制で、半分以上はカスタマーサポートに従事しています。アメリカのカスタマーサポートをするスタッフもいるので、時差対応もしています。

アメリカには40名ほどの人員がいて、うち15人程度が日本人、ほかは現地採用の、エンジニアなどのプロダクトを扱う人やカスタマーサポートなどです。アメリカのオフィスは、日本から来る出張者と現地オフィスの人と活発に議論が交わされています。

 Q: RockYou Inc. の前に、石塚さんは日本企業に 2 年ほどいらしたそうですね。大学卒業後に企業勤めをされた経験は起業にどのように影響していますか。今の大学生には、まずは一旦企業に入って経験を積んでから起業した方がいいのか、大学を出てすぐに起業した方がいいのか、悩んでいる人もいるようです。

A: やりたいことが明確にあるのであれば、やった方がいいですね。自分の仮説を早く検証した方がいいです。他にも同じようなことを考えている人が先にサービスを出してしまうこともありますから。

ただ、漠然と「将来的には起業したいな」と今思っているのであれば、まずは企業勤めをするというのも手です。仕事をしながらも、常に新しいアイデアやビジネスモデルに対してアンテナを張っておいたり、スタートアップ界隈につながりをつくっておいたりしながら、将来の共同創業者探しをするのもいいと思います。

Q: 「スタートアップ界隈」にネットワークを構築していくのはどのようにすると良いでしょうか。読者の中には、地方にいてなかなか起業家ネットワークにアクセスしにくいと思っている人もいそうです。

A: 実際にビジネスコンテストやスタートアップコンテストに応募するのは良いと思います。ただ、まだアイデアやチームがない、というのであれば、オーディエンスとしてコンテストやピッチイベントの会場に行ってみる、ボランティアスタッフをやってみる、そこで徐々に同じ思いを抱える友人をつくっていく、というのも良いと思います。

学生であれば、スタートアップの企業訪問をしたり、実際にスタートアップでインターンシップをしたり、実際に入社したりして経験を積むのも良いですね。

Q: 石塚さんはアメリカでは珍しい、文系出身でエンジニアになられたのですね。

A: はい、実は将来は政治家になりたいと思っていた時期があって、大学は政治学を専攻していました!ただ、当時のルームメイトの影響もあって学生時代からプログラミングを独自に習得して、大学卒業後はウェブエンジニアとして就職しました。

Q: 日本では石塚さんと同じように、文系出身でエンジニアになっている人も多いのですが、そういった人でもシリコンバレーでエンジニアを目指すことは勧められますか。アメリカではコンピュータサイエンスの学位がないと、エンジニアとしての就職は難しいとも聞きました。

A: 実力があれば、文系出身であろうが、理系出身であろうが、世界で通用します。実際、私も仕事をする中で、文系出身のすごいエンジニアともたくさん出会ってきましたし。

ただ、これはアメリカも日本も変わらないと思いますが、中途採用の場合は特にそれまで何をしてきて、今何ができるか、がポイントになります。特にアメリカは競争環境も厳しいので、経験の少ない人は難しい。だから、アピールできるような実績をまずは作りましょう。オープンソースにコミットして、コミュニティ内で実績を作るとそれがアピールになることもあります。
 

Q: 最後に、日本で起業したいと思っている人、あるいは日本で起業している人へのメッセージをお願いします。

A: ビジネスをやるからには世界市場を狙ってほしいですね。

一旦飛び出してみればチャレンジもありますが、機会もやりがいもその分大きいです。

がんばってください。

 

(聞き手: NICT グローバル推進部門統括 西永 望)
(協力・構成:Blue Field Strategies 関谷 英里子)

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