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メイフィールド・ファンド マネージングディレクター ティム・チャン氏

Mayfield Fund ティム・チャン氏

(ティム・チャン氏スタンフォード大学そばの高台にオフィスを構えるMayfield Fundの会議室にて)

シリコンバレー・インサイダーへのインタビュー・シリーズ、第二回は、著名ベンチャーキャピタリストであるティム・チャンさんにお話を伺いました。

ティムさんは、現在はシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタル、メイフィールド・ファンドのパートナーで、過去にノーウェスト・ベンチャー・パートナーズなどのベンチャーキャピタルや、モバイル・ゲームのngmoco(DeNAが買収)などを経験しています。大学ではエンジニアリング専攻出身で、卒業後はGMやゲートウェイ・コンピューターの日本支社での勤務も経験している日本通でもあります。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストの中でも、特にモバイル、デジタルメディア、デジタルコンテンツに強いとして知られ、日本が関係するベンチャーやベンチャー投資家とも関連の深いティムさんに、「投資する側」からのご意見を伺いました。

Q:  ベンチャーに出資するときにどんなポイントを重視しますか?

3つの「T」で始まる点を主に見ます。

  1. Team (チーム)- 過去に何度か創業して成功している人や、特定分野に精通しているという経歴がある、例えばこれまでGoogleやFacebookでは働いてきた、等のメンバーの場合、評価が高くなります。
  2. Traction (牽引力) - コンシューマプロダクトの場合、成長率、顧客の定着率、エンゲージメント(どれだけサイトで活動をしているか)などといったサービスの魅力です。Eコマースやほかの ビジネスの場合は売り上げです。一方、エンタープライズ向けプロダクトの場合、私は主にシリーズAで投資をしているのですが、この場合まだ売り上げはありませんが、様々なトライアルを行っており、Tractionが評価されます。最近では例えばどれくらいの開発者がプロダクトを使っているか等エコシステム的な側面からもこのTractionの一部です。
  3. Theme(テーマ) - TEDトークで語られるような、大きな理想を語れるようなものでないと、大きな成功は望めません。

私が担当しているのは総額4億ドルのファンドで、シリーズAで最初に20%の投資から始め、その後のフォローアップ投資で10-15%に持ち分が薄まるのが普通です。ですから、ファンドに十分なリターンを返すには、エグジット価値10億ドルという「大成功ベンチャー」が4つ必要になるわけです。このため、どうしてもベンチャーキャピタルは「大物狙い」になります。一方、それほど大化けする見込みがない、コツコツタイプの事業の場合では、最近はクラウドファンディングなど別の資金調達方法も出てきています。

Q:  日本のベンチャーがシリコンバレーのVCから資金調達する際成功するためのポイント、注意すべき点はなんでしょうか?

日本の起業家は、まず第一に、自分の考え方をグローバルやアメリカの市場に合わせるかどうかを自問すべきです。日本で成功しているからといって、同じアプローチでアメリカのマーケットで成功するとは限りません。アメリカののマーケットと日本のマーケットの違いをよく理解する必要があります。新しいビジネスモデルを考え出さなければならないかもしれません。例えば、メルカリは日本で成功してアメリカに進出していますが、アメリカの市場に合うかどうかはなんともいえません。 また、TED talkで語られるような、大きな理想を持っているかどうかも重要で、それを公言することを恐れてはいけません。、親の教育も重要で、日本では、起業家になることが奨励されているとはいえませんので、親は、子供がアントレプレナーになるよう育てなければなりません。

Q:  過去に日本で働いたり、ngMocoをDeNAに売ったり、吉本興業のアドバイザをやっているなどのご経験からみて、日本の強みはどことお考えですか?

日本企業の中では、ベンチャー投資家という意味ではリクルートが有望だと思っています。買収や投資に関して、保守的姿勢に陥らず、どんどん挑戦していますね。日本の起業家でも、新しい世代は挑戦的で、クリエーティブでいながら、きちんと事業の規律を守りプロセスや品質管理をきちんとやっている人がいます。孫正義さんはとても尊敬しています。彼はすごい思想家です。彼のような人がもっと出てきてほしいです。

しかし、問題はソフトウエアです。日本のかつての強者、ソニーやパナソニックがぱっとしないのも、ソフトウェアが弱いからです。今の世の中では、ソフトウェアがコアとなる価値を生み出すので、どうしても「クラウドとAI」の会社にならなければなりません。日本政府も企業も、AI技術者の訓練に重点的に投資すべきです。

オタク文化は面白いですし、それから職人芸の文化というのは、当地でいうメイカー文化に通じます。アニメやマンガの独立アーティストが、キックスターターやEtsyで作品を売るといったことも可能になっています。これについても、もちろんローカライズは必要ですが。現在、アリババなどに見るように、eコマースはとても大きく、小さなベンダーやメーカーが、ニッチ市場で職人的なブランドを確立することもできます。グローバル企業はどこから買うこともできるようになっています。製造メーカーの「マーケットプレース」もたくさん登場しており、小さな独立企業ほど、クローズドな相手に売るのではなく、オープンになることが必要です。Makers Rowや、Etsyなどの販売プラットフォームもありますし、Angel Listのようなクラウドファンディングもあります。

ロボティクスも日本の得意分野ですが、これもAIが加わらなければなりません。世界的にAIの技術者は不足しており、教育が必要です。宇宙分野でもスペースXのような企業が出てほしいです。

Q:  ポートフォリオ企業を育てるというのは、どの程度重要でしょうか?

投資した会社については、取締役会の席をとってモニターします。だいたい、大所高所からのアドバイスです。ポートフォリオ同士で役に立つ情報を共有したり、多くのスタートアップを見ることによりわかることを知らせたり、よい人を雇うのを手伝ったりします。

しかし、皮肉なことに、ベストの起業家は私達のアドバイスなど必要としません。自分たちでさっさとなんでもやってしまいます。だいたい、大成功するのはそういったベンチャーです。投資家の援助を多く必要とするようなベンチャーは、そもそも投資を考え直したほうがよいでしょう。

Q:  最後に、日本のベンチャーに何かメッセージをお願いします。

失敗することを恐れないでください。失敗は学ぶための価値ある方法です。次のときにはもっとうまくできるようになります。

仮説を検証していくのです。失敗ではなく、学ばないこと、同じ間違いをすることを恐れるべきです。学校というのは、失敗しないことを教えるところですが、新しいことは仮説を立てて検証しなければなりません。フィードバックのループを繰り返すのです。

それから、AI、データ、ディープラーニングの勉強に時間を費やしてください。医療など、多くの重要な分野でこの技術が役立つでしょう。

 

(聞き手: NICT グローバル推進部門統括 西永 望)
(協力・構成:Blue Field Strategies 海部美知)

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